子どもたちが学校へ出かけて、家の中に静けさが戻ってきた平日。Hさんはお気に入りのレコードをターンテーブルにのせて、そっと針を落とします。低くたゆたうようなベースラインに耳を委ね、ゆっくりと休日の始まりを楽しむのです。 学生時代から20年以上、本業と並行でDJやトラックメイカーとして活動してきたHさん。新居につくった3畳ほどのスタジオには、所狭しとサンプリングの音源になるアナログ盤や愛蔵のCD、制作用の機材が並び、さながらコクピットのよう。「仕事や子育てに追われて、新作にはなかなか手がつきませんが」と笑うHさんですが、このスタジオで好きな音楽に触れたり、ジャケット用のグラフィックを描いている時の充足感は、他の場所では得られないと話します。
冬の穏やかな日差しが照らすキッチンで、コーヒーを淹れる奥様。コポコポと豆にお湯を落とすたび、いい香りが室内に広がります。 年を重ねたら生活の全てを1階で完結できるように、と設計されたLDKは、動線が短くファンクショナルな空間。将来は畳敷きにもできる小上がりリビングや、キッチンに横付けされた大きな作業テーブル、カリモクのダイニングセットなど、思い思いの場所に腰掛けて、夫婦のコーヒータイムが始まります。
休日のお昼時は、二人でキッチンに立ちます。たわいないおしゃべりの間にも、息のあった連携プレーでたちまちランチが完成。 「こうして料理をしたり、庭をコツコツつくったりするのが楽しいんです。毎日にすごくポジティブな手応えがあるっていうか。どんなに刺激的で楽しい場所でも、うちで過ごす時間にはかなわないだろうって」。そう話すHさんの、満ち足りた表情がひときわ印象的でした。